マヌエル・レジェスのフラメンコギターを師匠から引き継いだ話

フラメンコギターを習い始めて、いつのまにやら、もう20余年が過ぎました。

私のギターの師匠は、一人だけです。師匠の生徒というか弟子は、今は私だけのような気がします。昔は、他の生徒さんも見かけましたが、このごろ全然会わないし。個人レッスンなので、他の生徒さんと全然交流がないのです。

師匠も年を取られまして、指が痛くなってフラメンコを弾くのはもうしんどい、耳も悪くなってきた、とよくこぼされるようになりました。

年が明けて初稽古のときに、ちょいと話がある、と。

もしかして引退??と、思ったんですが、教室をやめるわけじゃなくて、師匠のギターを引き継がないか? という提案だったのでした。

いつも練習で使っているのは、使い古された田村ギターなんですけど、そのギターっていうのは、なんと、マヌエル・レジェスです。

師匠自身、あまり使ってなくて、ほとんどコレクション状態、新品に近い状態で保存していたとのこと。

どこかの楽器屋さんに売ろうかとも思ったけれども、長年の付き合いある弟子が引き継いでくれたら嬉しいということで、はい、喜んで! と即答したのでありました。

マヌエル・レジェスの相場

といっても、タダじゃないです。

師匠が昔々に買った値段でいいということで現在の相場よりは、ずいぶん安いということですが、それでも私の愛機コンデ・エルマノス(入門モデル)の4倍くらい、マシな中古車が買えるくらいのお値段ではあります。

妻には内緒でお金をかき集めて、譲り受けたのでありました。

製作者のマヌエル・レジェスは最近お亡くなりで、現在は2代目のイーホさんが作っていて、それも高値で取引されている。初代の作品はなかなか入手もできない。売ったら儲かる、なんでも鑑定団に出したら面白い、というお話ですが、師匠から譲り受けるギター、もしかしたら形見になりかねないギターを売り飛ばすわけにも参りませんね。

だいじにしまっておいて、時々コンサートのときくらいに使わせてもらおうと思います。

マヌエル・レジェス試奏の感想

私の譲り受けたマヌエル・レジェスのラベルには1988と書いてありました。昭和63年。日本はバブル時代ですね。

おおかた30年前のギターですが、ピカピカです。といっても、ゴルペの衝撃で、ボディがポツポツへこんでいるところがあるので、まったく弾いてないということもなさそう。

ちょっと弾いてみましたら、悪くない音でした。

私の場合、楽器でも、カメラでも、クルマでも、お料理でも、人間でも、なんでもそうなんですが、レベルが上のものに出会った時、そんなに感動しないんです。

わあーすっごーい! と喜ぶキャラクターじゃありません。

ただ、以前のものを陳腐に感じるようになってしまうんです。

それまで、シャープな音色で最高! と思っていた、コンデ・エルマノス(入門モデル)が、なんだかこもった二流の音色に聞こえるようになってしまいました。

私の耳が、マヌエル・レジェスを聞いてしまった瞬間、上級レベルの基準にあってしまったということなのかもしれません。

弾いてみた感触も、弾きやすいです。それほど踏ん張って指に力を入れなくても、かなりの音量が出ます。

それでいて、小さい音を出そうと思えば、音量は少なくても、きれいな音をキチンと鳴らしてくれます。

なんというか、音のダイナミックレンジが広いです。弾きたい感じが、そのまま表現できるかんじです。

優れた日本刀のように「触れれば切れる」という印象を受けました。

師匠も、「上手い下手は、正直に言うと、テクニックだけじゃない、楽器の良し悪しも関係あるよ」、といっておられました。ステージで、マイクを通した時、どうなるのか是非試してみたいです。

しかし、はっきり言って、私には分不相応のような気も致します。所詮、自分でエントリー代を払ってステージにあがる、下手の横好きのアマチュアギタリストですものねえ。(一度だけ、ギャラを貰ったことはありますが。)

マヌエル・レジェスが喜ぶような演奏を、一度はしてみたいものではあります。

ビンテージギター使用上の注意

師匠から、マヌエル・レジェスを譲り受けるにあたって、使用上の注意を受けました。

傷をつけないようにということで、譜面台の使用禁止。まあ、練習に使うなってことですね。

カポタストは、ネックには革が当たるような作りになっているものを使うように。これは、スペイン式のなら問題ないでしょう。

弦は、サバレス使用のこと。これはなんで?? という気もしますけど、師匠が好きなのがサバレスだからかも。

ケースにしまう時は、弦を緩めて、ウェスで指紋と手の脂を拭いてから。ちゃんと鍵をかけて子供が勝手にいじらないように。

気をつかうことであります。

私はあんまりコレクター気質はなくて、クルマでもカメラでも服でも靴でも、気に入ったものだけトコトン使い倒すのが好きなのですけど、ビンテージギターは特別ですね。

大事にします。